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GoogleのOKRと人事評価制度

最近ではOKRを導入する企業が増えており、四半期ごとに自チームのOKRを設定しているプロダクトマネージャーも多いのではないだろうか。

OKRはシンプルなようで実践してみるとなかなか難しい。下記の記事はGoogle VenturesのRick Klau氏によるOKRの解説だ。

How Google sets goals: OKRs - GV Library

OKRの要点がまとめられているので抜粋して引用する。

  • Objectiveは野心的で、やっかいなものと感じるようなものにすること
  • Key Resultsは容易に計測可能なものにするころ(Googleでは四半期の終わりにKRに対して0から1.0の点数をつけている)
  • OKRは社内に公表すること。社内の誰もが他の社員のOKRを参照できるようにすること。
  • OKRの評点は結果的に0.6から0.7になるのが適正だ。もし誰かが常に1.0の評点を得ているとしたら、OKRが十分野心的ではないということになる。
  • 低い評点は罰則の対象にすべきでない。次の四半期のOKRをより良いものにするよう、データをもって支援すること。
  • 人事評価はOKRとは独立したものにすること

Googleは創業1年目にJohn Doerr氏の勧めでOKRを導入している。記事中のプレゼンテーション動画では、Doerr氏の当時のプレゼンスライドを見ることができる。動画中でKlau氏は「1年目のGoogleで導入できたのだから他の企業でもOKRを導入できるはずだ」と述べている。

Startup Lab workshop: How Google sets goals: OKRs - YouTube

興味深いのは「完全なトップダウンは望ましくない、60%ぐらいはボトムアップ的に決めること」という点だ。

これはカンパニーレベルのOKRをボトムアップで決める、ということではなく、

  • チームOKRや個人OKRは必ずしもすべてが上位のOKRから階層的にブレイクダウンしたものでなくて良い
  • チームや個人の意思を反映させる余地があっても良い

ということのようだ。厳密に階層化することよりも、全体の方向性を一致させることをゴールにしている。

また動画中ではKlau氏自身がBloggerのPMだったときに作成したOKRが紹介されており、OKRの実例として参考になる。

Googleが公開しているOKRガイドの中でもOKRの例が示されている。

re:Work - Guide: Set goals with OKRs

個人OKRまたはチームOKRの例

  • Objective: プロダクトの売上の成長を加速させる
  • Key Results:
    • 機能XXをすべてのユーザーに提供する
    • ユーザーあたりの売上をXX%増加させるために、施策XXを実行する
    • 売上成長のドライバーを発見するための実験を3つ実施する
    • Q1中に機能XXのテクニカルサポートを開始する

さて、OKRを実際に導入するにあたって多くの人が疑問に思うのは、

  • 達成が難しい野心的なOKRを設定すると、社員が「7割程度達成すれば良いのだろう」と思ってしまうのではないか
  • 人事評価に反映しないと、OKRを達成しようという動機が生まれにくいのではないか。

といった点ではないだろうか。

下記の記事ではGoogleの人事評価のプロセスがまとめられており、OKRにも言及されている。(Googleが公開している情報やGoogle出身者のインタビューに基づいて整理したもののようだ。)

Google’s Performance Management Practices | Qulture.Rocks

この記事によると、Goolgeではマネージャーが集まって各メンバーに5段階の評点をつける。(このプロセスはキャリブレーションと呼ばれる)

  1. 改善が必要 - Needs improvement
  2. 期待通り - Consistently meets expectations
  3. 期待を超える - Exceeds expectations
  4. 大きく期待を超える - Strongly exceeds expectations
  5. 圧倒的に素晴らしい - Superb

この評点をつける際に、競争環境の変化などを考慮した上でOKRの結果が参考にされる。つまり、Googleにおいては人事評価においてOKRを全く考慮しないというわけではなく、評価の参考情報の一つになっている。OKRと人事評価を独立させる、とは「OKRの結果が1.0なら昇給する」というデジタルな基準を設けるべきではない、ということであり、決してOKRと人事評価が無関係であるということではないようだ。

また同記事によると、Googleでは社員は下記の項目で評価される。

  • Googleらしさ(Googleの価値観に対する執着)
  • 実行力、自律性(自分の力でどれだけクオリティの高い仕事をしたか)
  • 特定分野での専門性の高さ
  • リーダーシップ
  • 社内での存在感

おそらく保守的なOKRを設定したりOKR達成に意欲的でない場合は、「Googleらしさに欠ける」といったような評価になるのだろう。

こうして見ていくと、単にOKRだけを導入しても正しく機能せず、人事評価も合わせて制度設計する必要があることがわかる。人事評価におけるOKRの位置づけを決めて社員に公開することでOKRの達成意欲が喚起され、達成意欲をもたない社員は活躍機会を失っていく。

OKRを導入したがうまく機能していないという場合は、人事制度の再設計を提案したほうが良いかもしれない。

人事制度はプロダクトマネージャーの責任の範疇を超えるのではと思う人もいるかもしれないが、自律したシステムをデザインすると言う意味ではプロダクト設計と社内の制度設計は共通するものがある。

OKRやGoogleの人事評価制度については下記の本が参考になる。

2019-08-12
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